本の数 2009/04/19 (Sun)

きっと

きっと、私が生涯で読むことのできる本は
人との出会いと同じ分の数しかないだろう

手に取ることも、知ることさえも適わなかった者達は
悠久の彼方に無形となって消えてゆく


だからこそ

だからこそ、この出会いは奇蹟なのだ

獅子 2009/04/13 (Mon)

生きているかと聞かれたら
生きていると答える

死んでいるかと聞かれたら
死んでいると答える


じゃあどちらだと問うならば
首を振ってこう提示する

ただ目覚めの時を待っているだけだ

 

触れる 2009/04/13 (Mon)

一歩踏み出した道は未知の世界だった

空はどこまでも広くて
風はどこまでもやさしくて
光に揺れる緑が 運ばれる波の香りが
私の中に眠るすべてをくすぐって

なにより
すべてが初めての感覚にあふれ

なにより
泣きそうなほど
すべてが輝かしく美しかった

初めて触れた大人の感覚に

私は、此処にいたいと　心から思ったのだ
 

歓喜の歌 2009/02/16 (Mon)

人は役目を終えると その場所を離れていく
友達も 仲間も 大切な人さえも
まるで導かれたかのように
それぞれの歩幅と行く先を変えて


太く真っ直ぐな線だと思っていた道は
実は様々な線の塊で
ゆっくりと でも確実に 緩やかな曲線を描いて
静かに離れていく


一本だけ残った見知らぬ道を
これから私は一人で歩く
怖くても苦しくても
こればっかりは仕様がない


きっとまた
交差と離散を繰り返しながら
また導かれたかのように
大切な人たちと出会っていくのだろう


だから私は歌うのだ
笑いながら 歓喜の歌を
暖かな朝の光を浴びながら
交わる未来で 一緒に歩く仲間がいることを願って

メモリア 2008/09/25 (Thu)

忘れられない思い出がある

冷え切って震えていた手に差し出された体温
恐怖心を振り払うように頭をなでられたあの日
初めて人の暖かみを知った

緊張に凝り固まった心に差し出された熱量
不安を吹き飛ばすように笑わせられたあの日
初めて遊び心の必要性を知った

起動の方法を忘れた頭に差し出された電力
日常を覆すように知識の討論を繰り返したあの日
初めて好奇心の楽しさを知った


忘れられない思い出がある
再びあの日々を掴む事はできないけれど

今日も私は生きています


新しい世界の扉を開けた途端に訪れた悪夢
冷たい言葉の雨に生きる事を捨ててしまったあの日
初めて人の醜さを知った

無意識に消してしまった成長と表現の自由
増えていく知識と思考から己の狂った精神を感じたあの日
初めて過ぎ行く時間の卑劣さを知った

忘れられない思い出がある
再びあの日々を取り返すことはできないけれど

今日も私は生きています


ある程度はくよくよするけれど
毎日不安とストレスに格闘しながらも
春風のようにゆるやかに
青空のように伸びやかに

今日を私は生きています