紫煙に霞む 2008/08/18 (Mon)

大人というものに私は憧れていた
大人になれば周りと同じようになれるのだと
この世界で生きていけるようになるのだと
そんな根拠のない幻想を夢見て



大人になればきっと何でも出来る
せわしなく働き続ける日常の中でも
「これが仕事だ」と割り切れば
日々抱えるストレスすら、如何にでもなる

人や環境と調和し
笑顔も上手く作れるようになって
私の知る大人は皆
大変そうながらも輝いていた



ただ一つ、頭から離れない
私の恩師が私にポツリと呟いた言葉
「友人は減っていくんだ。知り合いは増えていくのに」

素直に笑える環境があり、仲間がいる
それだけでも十分幸せじゃないかと思いながらも
その言葉を口にする事は出来なかった
あまりにも、その人が悲しい目をしていたから



帰り際、その人が煙草を吸う姿を見つけた
紫煙にまぎれて佇んでいるその感情が
この胸を捕らえて離さない

混沌にも似た空気が肺の奥まで入り込む
むせてしまいそうになる前に
その姿は私の視界から消えていた

プリズム 2008/07/12 (Sat)

モノクロだった世界に
美しい虹色を描く

暗闇だった世界に
きらめく光を灯す

凍えていた世界に
あたたかな温もりを与える

無音だった世界に
やさしい言葉を奏でる



何もなかった一点から
鮮やかな花を咲かせたあなたを

当たり前の一点を
鮮やかに変えていくあなたを



たった一人のあなたを
どうして愛さずにいられよう

幻想郷 2008/07/10 (Thu)

薔薇の種は待っていた
外に出るきっかけを
殻を破るための雫と養分を

薔薇の種は描いていた
外にある世界を
肌に触れてくれる風と太陽を

薔薇の種は信じていた
外で待つささやきを
幸せを説くマリアの存在を



待ち続けた切札は
描き続けた楽園は
信じ続けた女神は

夢に色彩と光を与え



色の鮮やかさと
光のぬくもりを知った薔薇の種は
その世界へと醒めた時、それは



ひとひらの幻想であったと知ったのだ

Fahlenheit 2008/06/26 (Thu)

氷点３２度　
沸点２１２度　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
CelsiusとFahlenheitの差は、こんなにも大きい。


あれほど優しいのに
あれほど素敵なのに

あれほど人間として良く出来ているにもかかわらず
なぜ別の道を選び出したのか
なぜこの場所に来てしまったのか

一瞬の思考が興味へと変わり
その興味が仲間の裏を探りとる


触れた絶対零度の破片は
セルシウスの気化熱を奪い

−459.67の温度は
悲しいほどに冷たく未来を凍らせる